TCHは歯と歯をくっつける習癖のことで、Tooth Contacting Habitの略です。
東京医科歯科大学顎関節外来にて最初に提唱された概念だと思っています。
少なくとも、20年以上前から顎関節の木野先生が提唱していたのを覚えています。
要は、顎関節症の原因はかみ合わせではなく、歯と歯をくっつける習癖が原因であるとする理論です。
何がすごいかというと、大がかりな治療が必要ないということです。
80年代から、顎関節症の原因論として、かみ合わせが注目されて、顎関節の専門=かみ合わせ専門という考えがずっとありました。
顎関節症があるという理由で、かみ合わせを直すために、大がかりな治療がなされることもありました。
顎関節症があると、かみ合わせを仮歯で修正してから最終的な補綴物を入れるという方法が多くとられていました。
その場合、健康な歯を削ったり、中には心因性のものも混在するため、仮歯を入れて、かみ合わせが受け入れられずに、
ドクターショッピングを繰り返すといった不幸も数多くありました。
それが、歯と歯をくっつける習癖を直すだけという簡単なアプローチに変わりました。
歯と歯を合わせているのが異常行動であるとする原理です。
歯と歯を合わせている時間はノーマルの状況では、1日トータル20分程度であるとする研究結果があるそうです。
それが、かみ合わせの違和感や顎関節症を訴える方は、ほぼ一日中歯と歯をくっつけている(かみ合わせている)状態になっているのです。
かみ合わせの違いによる影響よりも、くっつけている時間の影響の方が圧倒的に大きい。
考えると当たりまえのお話ともいえますが、今でもかみ合わせに原因があると考えてドクターショッピングを繰り返す人も多いのです。
東京医科歯科大学の顎関節治療部では、顎関節症の治療方法として、歯と歯をくっつける習癖をなくす治療にとって変わられました。
最終的に羽毛田匡先生により、JDRという歯科雑誌で一番格上の論文に掲載されました。
スプリントやマウスピースでかみ合わせ等を改善する治療よりも、歯と歯をくっつける習癖をなくす治療の方が、顎関節症の改善には有効であるという事実が世界中に広まったのです。
Randomized clinical trial of treatment for TMJ disc displacement.
Haketa T, Kino K, Sugisaki M, Takaoka M, Ohta T.
J Dent Res. 2010 Nov;89(11):1259-63. doi: 10.1177/0022034510378424.
どのようにして、TCHを是正するのかについては、以下のリンクでご覧ください。